TOTOトイレ工場の派遣社員惨死裁判、偽装請負を認定。TOTOは謝罪拒否

大手衛生陶器・住宅設備機器メーカーの「TOTO」滋賀工場(湖南市)で2007年5月に偽装請負・違法派遣状態であった西野尾茂信さん(当時39歳)が機械に挟まれて死亡した事件の訴訟の判決公判が22日、大津地裁であった。

死亡した茂信さんの遺族が、TOTOが違法派遣・偽装請負という状態の勤務で、法的にも禁止されている危険な業務を行わせたうえ、安全対策も不十分だったとして、同社などに約1億円の損害賠償を求めていた。

判決を前に、茂信さんの父末吉さんは「派遣社員だからといって人間の命を軽視しないで」と語った。

訴状によると、茂信さんはTOTO滋賀工場において、停止したトイレタンク製造ラインの復旧作業中、機械が動き出し、機械と支柱の間に頭を挟まれ死亡した。TOTOでは機械センサーに身を乗り出して手をかざす危険な復旧方法が常態化していたといい、原告団TOTOが安全管理を怠ったと主張。

一方、TOTOは「西野尾さんは請負業者の指揮監督下で作業。当社に一切責任はない」と主張し、謝罪等の一切を拒否していた。

津地裁の石原稚也裁判長は、「TOTOは生産効率を求めるあまり危険な作業を容認・放置した」と指摘、茂信さんにも過失があったとするTOTOの主張を退け、「実質的にはTOTOが指揮命令を行っていた」として、TOTOと派遣会社による違法な偽装請負であったと認定、TOTOなどに約6140万円の賠償を命じた。

父の末吉さんは「茂信の墓前で『よかったな』と報告したい」と涙ながらに語った。兄である吉治さんは「勝訴したが茂信はもう返ってこない。今後、悲しい目に遭う派遣社員が出ないように。」と涙を流し、肩を震わせた。

今もTOTOからの謝罪はないという。末吉さんは「茂信の命は故障して取り換えられた部品のようだ」と憤る。